
通話中の相づちは誰のもの? AIが作る偽通話の恐怖
もし今、あなたが電話で話している相手が、本当に人間だという保証はあるでしょうか?
最近のAI音声合成技術は、たった数十秒の音声サンプルから、本人そっくりの声を作り出せます。
しかも、ただ文章を読むだけでなく、息づかいや「うんうん」「ああ、なるほど」といった自然な相づちまで再現してくるのです。
この技術、便利な使い方ももちろんあります。
声を失った人が再び自分の声で話せるようになるなど、医療やエンタメでは素晴らしい成果を出しています。
しかし、その裏で詐欺師たちはこの進化を悪用し始めました。
典型的な手口は「なりすまし通話詐欺」。
まずSNSや動画、配信アーカイブなどからターゲットの声を集めます。
そこからAIに声の特徴を学習させ、そっくりの“偽声”を生成。
家族や知人になりすまし、「急ぎでお金が必要」「ログインコードを教えて」などと迫ってきます。
従来の詐欺なら声色の違いで気づけたかもしれませんが、AI偽声はほぼ本人レベル。
しかも会話中にタイムリーな相づちや笑い声を入れるため、違和感が極端に少ないのです。
さらに恐ろしいのは、会話の内容までAIが生成する「完全自動通話」。
詐欺師本人が電話口にいなくても、AIが状況に応じてリアルタイムで返答します。
こちらが「え、それどういう意味?」と聞けば、「あ、いや、つまり…」と会話っぽく濁してくる。
もはや脚本なしで詐欺が進行する時代です。
では、どうすればこの“偽通話”を見抜けるのでしょうか。
一つの方法は、相手しか知らない質問を投げることです。
たとえば家族なら「この前一緒に行った店の名前覚えてる?」など。
AIはネット上にない情報や思い出話には弱く、答えが曖昧になりがちです。
もう一つは、音声の細部に耳を澄ますこと。
AI音声は高精度でも、極端に均一な声質や、無音部分が不自然に短いことがあります。
また、ネット回線経由の場合は、音声データの遅延や圧縮特有のノイズにも注意です。
AntiSpyPhoneユーザーなら、防御の選択肢はさらに広がります。
通話アプリの権限を細かく管理できるため、怪しいアプリによる勝手な通話発信や録音を防げます。
AIによる偽通話は、これからますます巧妙になるでしょう。
もしかすると数年後には、家族の声とAIの声を聞き分けるのはほぼ不可能になるかもしれません。
しかし、私たちが「声は必ずしも本人の証拠にならない」という意識を持てば、騙される確率は大きく減ります。
次に電話がかかってきたとき、その「うんうん」と頷く声が誰のものか、ちょっとだけ疑ってみてください。
それが、本物と偽物を分ける一歩になるかもしれません。