Signalの通信は端末を押収されなくても追えるのか?
犯人は「本体」ではなく「電話番号」です
「Signalを使っていれば追跡されない」よく聞く話です。
でも、いざこんな状況を想像すると、急に不安になりませんか。
ある端末(Aとします)が押収されて解析されました。
中を見ると、SignalでBという相手とやり取りしていた形跡が出てきました。
Bの端末は押収されていません。
それでも、BがどこでSignalを使い、誰とやり取りしているかは追えてしまうのでしょうか?
今回はこの「めちゃくちゃ具体的な不安」を、一つずつ分解してお答えします。
先に結論だけ言ってしまいます。
Signalそのものは、驚くほど口が堅い。
情報を漏らしているのは、いつだって"電話番号"のほうです。
つまり弱点はアプリでも本体でもなく、電話番号とそれを握っている通信キャリアにある。
ここさえ腹落ちすれば、この記事の8割は理解できたようなものです。
それでは中身へ行きましょう。
登場人物を紹介します
技術の話を始める前に、この物語のキャストを人間に例えておきます。
あとの説明がぐっと分かりやすくなります。
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Signal……何を聞かれても「知らぬ存ぜぬ」を貫く、口の堅いボディガード。
拷問(法的開示要求)に遭っても、ほぼ何も吐きません。
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電話番号……本人はそのつもりがないのに、あなたの素性をあちこちに配って回る、おしゃべりなご近所さん。
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通信キャリア……あなたの契約情報も、居場所も、使っている端末も全部知っている大家さん。
令状という「正式な書類」を見せられると、ちゃんと答えます。
追跡が成立するかどうかは、結局この3人のうち誰が何を知っているかで決まります。では順番に。
Q1. Aを解析したら、Bについて何が分かるの?
ここで最初に、とても大事な勘違いをほどいておきます。
「電話番号」と「端末番号(本体の識別番号)」は、まったくの別物です。
ここを混同したままだと、この先ずっと話が噛み合いません。
ゆっくり分けて考えましょう。
Aが「ロックが解除された状態」で押収・解析されてしまうと、Aの中のSignalの会話は残念ながら読まれてしまいます。
そこから相手Bについて分かること/分からないことは、こうなります。
| 知りたい情報 | Aの解析で分かる? | ひとこと |
|---|---|---|
| Bの電話番号 | 分かる可能性が高い | Signalは電話番号を土台にしているため、会話相手の番号がAの中に残っていることが多い |
| Bの端末番号(本体の識別番号) | 分からない | Signalは本体の識別番号をそもそもやり取りしない。Aをどれだけ解析しても出てこない |
つまり、Aを解析して手に入るのは「Bの電話番号」まで。
Bのハードウェアそのものの正体(本体の識別番号)は、ここでは出てきません。
「端末を解析されたら本体番号までバレる」というのは、Signalに関しては誤解です。
ただし電話番号にも例外があります。
Bが「ユーザーネーム」機能を使って電話番号を隠していた場合は、Aの中にはBの表示名やユーザーネームしか残らず、電話番号が見えないことがあります。
この「ユーザーネーム」、後半の対策パートで主役級の活躍をしますので、覚えておいてください。
Q2. Bを押収せずに、Bの通信相手を追えるの?
さあ、口の堅いボディガード(Signal)の出番です。
結論から言うと、Signalの仕組みの側からは、ほぼ不可能です。
ここがSignal最大の強みで、正直、感心するレベルです。
理由は2つあります。
まず、Signalのサーバーはメッセージの中身を保存していません。
中身がそもそも手元にないので、開示しようがない。
そしてもう一つ、Signalは「誰が誰に送ったか」という宛名の情報すら、サーバーから見えにくくする仕組みを備えています。
手紙で言えば、封筒の中身どころか宛名まで隠して運んでいるようなものです。
その結果どうなるか。
Signalが法的な開示要求に応じて出せる情報は、基本的に「アカウントが登録された日」と「最後に接続した日」くらいです。
連絡先の一覧も、通信相手も、メッセージ履歴も、Signalはそもそも持っていないので、渡しようがありません。
つまり「Bのアカウントを起点に、Bが誰とやり取りしているか」をSignal経由で割り出すのはできません。
ボディガード、仕事しすぎです。
Q3. 端末番号や、基地局の位置情報まで割り出せるの?
ここは、正直にお伝えしなければならないところです。
Signalからは無理。
でも「電話番号」を起点にすれば、キャリア経由で届き得ます。
思い出してください。
Q1で、Aの解析からBの電話番号が判明し得る、と言いました。
この番号がいったん分かってしまい、かつ正式な法的権限をもってキャリアに照会できる立場の相手であれば話は変わってきます。
なぜなら、電話番号に紐づく以下の情報を握っているのは、口の堅いボディガードではなく、全部知っている大家さん(キャリア)だからです。
- その番号に紐づくSIMや、本体の識別番号
- 契約者の情報
- 基地局から生成される、おおまかな位置情報や通信記録
情報を漏らしているのはSignalではありません。
「電話番号がキャリアに紐づいている」という構造そのものが漏らしているのです。
追跡の流れを一本のドミノにすると、こうなります。
① Aを押収・解析 →
② Bの電話番号が判明 →
③ その番号でキャリアに照会 →
④ Bの本体識別番号・位置情報・通信記録に到達
このドミノ、最初の一枚をよく見てください。
すべての起点は「Bの電話番号が、実名や実在のキャリアに紐づいていること」です。
Signalは、このドミノのどこにも指一本触れていません。
倒しているのは、いつも電話番号のほうなのです。
いったんここまでを表で整理しておきます。
| Signal(ボディガード)が知っていること | キャリア(大家さん)が知っていること | |
|---|---|---|
| メッセージの中身 | 持っていない | 持っていない(暗号化されているため) |
| 通信相手・連絡先 | 見えにくくして保持しない | ── |
| 登録日・最終接続日 | これくらいは出る | ── |
| 契約者情報 | 知らない | 知っている |
| 本体の識別番号・SIM | 知らない | 知っている |
| 基地局の位置情報 | 知らない | 知っている |
見事に、右の列だけ埋まります。
狙われているのは電話番号なんだな、というのが一目で分かりますね
じゃあ、どう守ればいいの?(効果が高い順)
ここまで来れば、対策の方針は明快です。守るべきは「本体」ではなく「電話番号」。
この一点に尽きます。
効果が高い順に並べました。
| 順位 | 対策 | 何が変わる? | 手間 |
|---|---|---|---|
| 1 | Signalに登録する番号を、実名・実在キャリアに紐づかない番号にする | 追跡ドミノの一枚目を抜く。最も効く | 中 |
| 2 | ユーザーネーム機能で電話番号を隠す | Aが解析されても相手に番号が渡りにくくなる | 小 |
| 3 | 消えるメッセージを使う | 端末が解析されても読み取られる情報を減らせる | 小 |
| 4 | 相手・用途ごとにアカウントや番号を分ける | 一つ辿られても、被害が波及しない | 中 |
一つずつ補足します。
① 電話番号を「本人」から切り離す(いちばん効く)
追跡ドミノの一枚目そのものを抜く、最強の一手です。
本人確認と切り離されたデータ用の番号などを使い、Signalアカウントを実身元に紐づけない。
ここが実名のままだと、ほかの対策をどれだけ積み上げても土台が崩れたままになります。
逆に言えば、ここさえ断てれば、ドミノは最初から倒れません。
② ユーザーネームで電話番号を隠す
Signalには、電話番号を相手に見せずにやり取りを始められる「ユーザーネーム」機能があります。
Q1で触れた「Aが解析されたときに相手の番号が割れてしまう」問題への、直接の対策です。
現行のSignalでは、番号のプライバシーが2段構えになっています。
ここは元の説明より少し正確にお伝えします。
- まず
設定 → プロフィールからユーザーネームを作成します。
- 次に
設定 → プライバシー → 電話番号で、
-
「電話番号を表示する範囲(Who can see my number)」を「誰にも表示しない」 に、
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「電話番号で自分を見つけられる範囲(Who can find me by my number)」を「誰にも許可しない」 に設定します。 (※「検索されない」に設定するには、先に「表示しない」を選んでおく必要があります。)
-
「電話番号を表示する範囲(Who can see my number)」を「誰にも表示しない」 に、
一つ注意点があります。
すでにあなたの番号を連絡先に登録している相手には、遡って隠すことはできません。
これから始めるやり取りに効く設定、とお考えください。
③ 消えるメッセージ
あらかじめ決めた時間で、メッセージが両者の端末から自動的に消えます。
万一どちらかの端末が解析されても、そこから読み取れる情報自体を減らせる、シンプルで強い機能です。
会話ごとに相手の名前をタップして設定できるほか、設定 → プライバシー から新規会話すべてに既定で適用することもできます。
④ 相手・用途ごとに分ける
一つのアカウントや番号が辿られても、ほかのやり取りに被害を波及させない、という考え方です。
以前ご紹介した[プロファイル分離/プライベートスペース]の仕組みを使えば、同じ端末の中で用途ごとにSignalやSIMを分けることも可能です。
「毎回やり取りしていた端末は、買い替えるべき?」
最後に、いちばん気になっているであろうご質問に、正直にお答えします。
本体の買い替えは、この問題に対しては最も効率の悪い対策です。
もう理由はお分かりですね。弱点は本体ではなく、電話番号だからです。
ピカピカの新品に替えても、電話番号とSignalアカウントが同じままなら、あのドミノは一枚も抜けません。
まず取り組むべきは、本体の交換ではなく、
①番号を実身元から切り離すことと
②ユーザーネームの活用です。
もちろん「番号ごと入れ替えていく」運用が有効な場面もあります。
すでに番号が知られてしまった場合や、長期的なつながりそのものを断ちたい場合です。
ただし連絡の継続性が途切れ、手間も大きい重い手段なので、優先順位としては後ろになります。
順番を間違えないことが肝心です。
最後に、一点だけ真面目な話を
ここまで軽い調子でお話ししてきましたが、この一点だけは、はっきりお伝えしておかなければなりません。
以上は、あくまで技術的な仕組みと、一般的な考え方の説明です。
AntiSpy Phoneは、適法な法的手続きそのものを回避するための道具ではありません。
ご説明したとおり、電話番号を起点としたキャリアへの照会には、端末側の設定だけでは対抗しきれない領域が残ります。
この線引きを正確に認識しておくことが、かえってご自身を守ることにつながります。
本記事は法的助言ではありません。具体的なご事情については、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。
この記事のまとめ
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Signalそのものは追跡に極めて強い。 漏れているのは電話番号とキャリアの側。
- Aを解析して分かるのはBの電話番号まで。本体の識別番号は出てこない。
- Signal経由で「Bの通信相手」を割り出すのはほぼ不可能。
- ただし電話番号が実身元に紐づいていると、キャリア経由で位置情報などに到達され得る。
- だから対策の主役は「本体の買い替え」ではなく、電話番号を実身元から切り離すこと。


